スイス探訪⑦ EPILOGUE(ZURICH~ABU DHABI~NARITA)

5/9(木)~5/16(木)

⑦ 5/15(水)~16(木) チューリッヒ・クローテン国際空港~アブダビ国際空港~成田国際空港~帰宅

「おうちに帰るまでが遠足」とはよく言うが、その言葉を当てはめるなら、しっかり帰宅するまで日記に残さねばならない。エピローグがてら、帰り道の話でもしておこう。

前章でのんびり物思いにふけっているような描写を醸し出していたが、実際は忙しなくパッキングに勤しんでいた。水曜日は早朝から起きて、せかせかと朝から支度をして、丘の途中の可愛らしいシェアハウスに別れを告げる。歩幅の合わない階段から、お世話になったこの街に礼を言った。

ヴィンタートゥールから列車に乗り込み、チューリッヒ空港へ。成田の反省を生かし、今回は3時間前だ。チェックインカウンターでスキーと手荷物を預ける。よく聞き取れない英語はパートナーがサポートしてくれた。ちなみに今回も行きと同じくエティハド航空だ。アブダビでトランジットである。

まだ搭乗まで時間があったが、パートナーに手を振ってゲートへ向かう。留学もあと2ヶ月間、頑張って!

出国審査は特にトラブルなく終わり、ゲートの中のお土産店に入ってかわいらしいパーカーを買ってしまったり、マムートショップを覗いたりする。そういえばマムートはスイスのメーカーだった。

空港の警備の方がえげつない銃を持っててビビり散らす。でも、こうしてスイスが中立を守り続けていると思えば、納得がいく。

やがてベンチで文庫本を読みながら時間を潰し、搭乗の時間となった。いよいよこの国ともお別れだ。

搭乗してチケットを見るとどうやら窓際の席だった。おそらく暇にはならなそうだ。滑走路のアスファルトを眺める。アスファルトに特に思い入れはないが、離陸した瞬間、スイスの風景が見えた時に、やはり少し寂しさを覚えた。また来るよ、と言いたくなるが、次に来るのは一体いつだろう。このような感情はいずれ、日常に紛れてどこかへ消えてしまうのだろう。

離陸して少しすると機内食が配られた。白身魚のソテーだ。機内食は普通に美味い。

景色を見てるうちにウトウト眠っていたようで、いつの間にか地平線はオレンジに染まり、アブダビまでもうすぐという所まで来ていた。

宵のアブダビに降り立つ。1度経験すればトランジットも慣れたものである。空港内の表示の通りに進み、保安検査を受ける。今回はトランジットエリア内でサンドイッチを買ってみた。普通に美味い。

搭乗ゲート内のベンチで文庫本を読みながら時間を潰す。飛行機に乗り込めば次は成田だ。

飛行機に乗ると、隣の席がたまたま空いており、少し快適だ。ダウンロードしてきたアニメを見ようとするが、なんとライセンス切れで見れない。10時間虚無になってしまう訳にはいかないので、飛行機の座席に取り付けられたモニターで映画を見ることにした。最初は画像にインパクトがあったので「Joker」を観ていたのだが、普通に怖い。洋画に興味が無い僕は困り果てたが、とりあえずアニメを探す。何故か「すずめの戸締まり」だけあったので、とりあえず惰性で見る。ちなみに意味もなく2周した。「ショーシャンクの空に」とかを観る気分でもなかったし。というより、知ってる映画がショーシャンクとダイ・ハードしか無かった。

映画鑑賞にふけったあとは一眠りして、起きると成田まであと1時間というところだった。モニターで地図を確認すると、見知った街の名前ばかり写っている。日本に帰ってきてしまったか、と少しばかり後ろ髪を引かれる思いだが、同時にちょっと安心した。

1週間ぶりに成田に降り立つ。入国審査を受け、手荷物を受け取りに向かう。スキーがあるせいか少し時間を食ったが、無事に全部回収できて一安心した。

税関を通過してターミナルに出る。ターミナルに出ると日本語が飛び交っていて、日本に帰ってきたことを実感する。

乗り換えが億劫なので、直行バスで宇都宮に戻ることにしたのだが、どうやらスキーは積み込みができないらしい。大人しくクロネコヤマトにお願いした。

バスはちょうどいい感じの時間に来てくれて、乗り込んだら宇都宮へ直行だ。こういう時、時差ボケを治すには無理やりにでも起きておくのが好ましい、と何かの本で読んだが、案の定僕はバスの中で爆睡を決め、家に帰ってからも、ろくに片付けもせず惰眠を貪った。おかげで翌日の会議中に船を漕いでしまい、上司に窘められたのだった。

内弁慶がすぎる自分がいきなり海外に出たのが珍しいのか、身の周りの人々が皆、僕にスイス旅行の感想を聞いてくれるのだが、僕は結構お喋りなのに、口頭では語彙力が皆無なので、「凄かった」「本当に綺麗」「エグい」みたいな小学生レベルの感想しか出てこないのである。まあ確かに正しい感想ではあるのだが、おかげで会話が続かず微妙な顔をされる。本当に申し訳ないと、感想を聞かれる度に思っている。

だから、詳細な感想はこの日記を読んでくれると助かる。

翌日、仕事の帰り際に銀行口座を覗いたら、だいぶ貯金を使い果たしてしまったようだった。割と悲惨なので、詳しい額は言わない。体験は金銭に勝るのだと信じているが、結局現代社会では、お金がないとできないことの方が圧倒的に多いのだ。

だから、僕は再び、捻くれたことしか口走らない、くたびれた流浪の旅人を気取って行こうと思う。ポケットのコインを集める程度のお金で、また好きな場所へ繰り出すだけだ。

でも、安心してほしい。僕が口走る捻くれた文句は、多分本心では無い。おそらく、君たちの豪華絢爛な旅行を、心の中ではとても羨ましがっているのだろう。それでも、くたびれた自分を信じたいだけなのである。ポケットのコインだけ握りしめ、流浪の旅人を気取りたい、そんな浪漫を追い求めるだけの捻くれた一社会人が、酔っ払いながら管を巻いているだけだ。

ほんとにおわり


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