中央アルプス 越百山


2024/11/3(日)-4(月)

この3連休は、昨年途中で断念した南ア深南部のリベンジをしようと思ったが、土曜日が土砂降りの予報だったので断念した。

紆余曲折あり、転進先に選んだのは中央アルプスの越百山。「コスモ」と読むらしい。何気に初の中央アルプス来訪である。

あらかじめ東京の実家に帰っておき、前日夕方にメンバーを登戸駅のロータリーに集める。土砂降りの中央自動車道を西進し、木曽福島へ向かう。メンバーのうち一人は神戸からやってくるので、木曽福島駅で合流することにしていた。適当な公園で前泊する。土砂降りをもたらした雨雲はどこかへ消え去り、いつの間にか星空が綺麗だ。

早朝から山道を進み、伊奈川ダム手前の駐車スペースに降り立つと冷気が素肌を通り過ぎる。前日の大雨のせいだろう、橋の下の伊奈川は轟々と音を立てて増水している。山は少し靄がかかっているが、いずれ晴れそうな雰囲気だ。食べられるキノコでも生えていないか探しながら、退屈な林道歩きをこなす。

福トチ沢の出合から登山道に入る。つづら折りの急登をいなす。樹間から差し込む光が神々しい。爽やかな秋の空気を感じながらコツコツ登り、越百山からの尾根に乗る。登っていくにつれて、周りは赤と黄の衣装を羽織った広葉樹の森から、しっとりとしたシラビソの森へと変化していく。

夏場ならひたすら続く登りに大汗を滴らせながら辟易しそうな感じだが、この季節は特に気にしなくても視界に色とりどりの景色が広がるものだから、退屈せずに登ることができるのが良いものだ。休憩するとすぐ体が冷えてしまうことだけが難点だ。

秋晴れの青空が遠くの景色をよく映えさせる。展望台の表記のある看板の小広場を越えると北方面の眺めが良く、木曽駒ヶ岳、八ヶ岳連峰などを眺めながら標高を上げていく。

辿り着いた越百小屋は山あいのコルに立つこじんまりした小屋だった。小屋からは越百山と仙涯嶺がよく見える。荷物をデポして山頂へ向かう。

空身となって足取りは軽い。ルンルン気分で越百山の山頂に降り立つと、初めて南アルプス方面の視界が開ける。伊那谷を経て南北に連なる南アルプスを一気に視界に収めることができる極上の展望台だ。「あれが北岳」「あれが塩見」「あれが悪沢」と化物語みたいなことをした。メンバーのうち1人は学生時代に畑薙から夜叉神峠まで南アルプス縦断を成し遂げているので、南アをガラリと眺めて感慨深そうだった。しばし景色を眺めて感嘆の声をあげ、記念写真を撮って下山を開始する。

登っている間は「今日中に下山できるのでは?」と軽口を叩いていたが、越百小屋に戻ってくると既に15時を回っていた。秋の日は釣瓶落としで、余裕でヘッデン下山確定コースなので、今日はのんびり越百小屋の冬季小屋に泊まることにした。

夕食は豆乳坦々鍋。9月に悪天候で断念した黒部横断から温めていたレシピだった。まあ、僕はグツグツ煮立つ鍋を眺めながら、豆腐とニラを切っただけである。いつも美味しいレシピを考案してくれるメンバーには感謝が絶えない。

小屋の前からの星空はおそらく今年一の眺めだった。調子に乗って「あれがデネブ、アルタイル、ベガ 君は指さす夏の大三角」をやってみた。もう晩秋なのだが。

おおよそ10時間ぐっすり寝て下山を開始する。流石に朝の空気は寒く、フリースを一枚羽織る。下山中に携帯の電波が入って、横浜ベイスターズが日本一になっていた。おめでとう。

ヒイヒイ言いながら登った道も下りるのは速い。他愛のない会話をしながら歩みを進めたら、いつの間にか林道との合流点に辿り着いていた。ほんのり暖かな日差しが差し込む林道の隅っこにザックを置いて座り込み、しばしお喋りしながらお菓子タイムとなった。今回はメンバーが色々と行動食を恵んでくれた。ザックの底の和菓子アソートは次の機会に回そう。

後輩の話を色々と聞きながら林道歩きをこなす。川の向こうの山肌の紅葉がとても綺麗だ。林道歩きは退屈なはずなのに、気がつけば林道を歩ききって駐車スペースに着いていた。人と行く山はいいものである。

下山後は気になっていた桟温泉へ向かう。赤みの強い含鉄泉だ。木曽川の眺めがいい。旅館の廊下で昼寝をしていた茶トラ猫は、人の気配を感じて薄ら目を開けるも、再び昼寝を続けていた。

お昼ご飯を食べるべく木曽福島駅へ移動する。初日からメンバー間で「下りたらカツ丼が食べたい」だの、「ソースじゃなくて卵で閉じてないと認めない」だの、カツ丼に憑りつかれていたので、駅前の定食屋に入って4人仲良くカツ丼を注文した。「ぼっち・ざ・ろっく」のTシャツを着ていたら、店の人がファンだったらしくめちゃくちゃノリノリで対応してくれて微笑ましい。確かに木曽に来るようなアニメオタクはなかなか珍しい気もするから、テンションが上がるのはなんとなくわかる。

関西からのメンバーの列車を待つついでに、福島宿の街並みを練り歩く。木材をふんだんに使った家屋から林業が盛んであることが伺える。酒蔵に寄ってみたり(飲んでないよ)、和菓子屋で栗の和菓子を買って食べ歩きしてみたり、江戸時代にタイムスリップしたかのような街並みで、ひたすら穏やかな午後を過ごした。

木曽福島の駅で神戸に帰るメンバーを見送って帰路に就く。東京を経由して宇都宮に至る道のりは長いが、今日の思い出に浸れば早いものだ。東京でメンバー2人を送り届けて、珍しくJPOPを流したりしながら、深夜の東北道を駆け抜けた。

初の中央アルプスは、素晴らしい好天に恵まれ、パーティーメンバーのサポートもあって想像以上のプレゼントとなった。でも、来年こそ深南部へ行こう。「不完全燃焼」は嫌いなのだ。それと、寸又峡温泉に入りたいのである。

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