2024/6/22(土)
浅草岳あたりにでもハイキングに行こうかと思い、日が昇るタイミングで自宅のドアを開けた。いそいそとハンドルを握る。ナビに表示されるデジタル時計は4:32の文字列を表示していた。ああ、そういえば昨日は夏至だったな、と欠伸が出る。長い1日の始まりだ。
会津西街道を北上しながら、身体が徐々に起きてくる。身体の覚醒に合わせて、脛の周りが徐々にじんじんと痛みを主張してくる。そういえば最近走りすぎてシンスプリントになっていたことを思い出す。普通に結構痛いので早々に浅草岳でのハイキングをあきらめて、ひとまず車を走らせることにした。
慣性の法則に任せてダラダラ走る。鬼怒川から川治温泉を経て、田島から駒止峠を越えて南郷に出る。南郷スキー場を背にそのまま惰性で走り、只見の駅前の駐車場から要害山と蒲生岳を拝む。田子倉の休憩所に立ち寄って浅草岳を眺め、そのままテキトーに車を走らせていく。六十里越のトンネルで「\ポ-ン/新潟県に入りました!」などというナビ音声が聞こえたが、とりあえず聞かなかったことにした。
ハッ!!と気づいた頃には小出に出ていた。あらら、会越国境越えをやってしまったか。車だけど。ここまで来る気は無かったのだが、流浪の民の雰囲気でも纏いながら魚沼の田園地帯を徘徊することにしよう。雰囲気作りにサングラスを掛けて髪の毛を掻き乱したが、不意に車の中が非常に汚かったことに気が付いて、ガソスタに寄って給油がてら掃除機をかけた。ついでに髪の毛も直した。今日は天気がいい。
魚沼に出てくるとやはり八海山の眺めがいい。こういう時は水無川のほとりで昼間から八海山でも飲みながらダラダラするのがいいのだろうが、当然お縄につく訳にはいかないので、程良くやる気のない僕は、とりあえず八海山をどこか眺めの良いところから見ようと思い、Googleマップで「眺めのいい場所」と調べる。すると、長森山という山が出てきた。
そこで、ジオグラフィカを開いて周りの地形を見ていると、「六万騎山」なる、微妙にカッコいい名前の山を見つけた。史跡でもありそうな名前だな、とピンと来たので、とりあえず行ってみることにして、車を走らせる。
麓のコンビニで麦茶とちぎりパンを買い、それだけ持って登り始める。「君をのせて」の気分だが、ナイフもランプもカバンも無い。麓には神社と、境内の広場にブランコがぽつり。登っていくと途中視界が開けて、八海山が見えた。良い。ただ、まだ登り始めて5分程度なので、休憩するのはちょっと癪だ。少し眺めて先へ行く。
頂上へは20分程度だ。「六万騎城址」の石碑が立っていて、やはり僕の勘は当たっていたようだ。調べると、越後の豪族である上田長尾氏が南北朝時代に築城した山城らしい。ちぎりパンを貪りながら八海山を眺めていたが、突如戦闘機のような音がして、振り返ると黄色と黒の奴がキレ気味に旋回していた。僕の一番の天敵である。椅子に座った状態から見事なジェットスタートを決めた。
勢いのままに駆け下り、人類の敵から逃れた。おかげで脛がジンジン痛む。勘弁してほしい。アイツらだけは許さない。
のんびりするところが、1時間もかからず降りてきてしまった。さすがに味気ない。ひとまず定食屋でラーメンを食べて、次は坂戸山へ向かう。こちらも上田長尾氏が築城した坂戸城という山城の遺構があり、山自体もこちらの方が大きいので遺構も大規模だ。上杉景勝も居城したことがあり、遺構全体が国の重要文化財となっているらしい。
さて、再びペットボトルの麦茶とグミを持って登り始める。登山口には猿の群れがたむろしている。ウオオオオオ!!と叫び声をあげたら散り散りになった。人間様を舐めるんじゃねえ。
桜の木が並ぶ階段状の斜面を進むと、カタクリの群生の看板が立つ尾根に出る。春先は相当綺麗なのだろう。やがて少しずつ尾根が細くなり、振り返ると魚沼の街だ。そしてとにかく暑い。ここは標高700mもない低山の、午後2時半の尾根の上だ。
山頂直下ではホタルブクロのお出迎え。いつの間にかペットボトルを飲み干していて、熱中症になりかけながら山頂に出た。坂戸山の山頂標識の先に八海山が見える。ここからの八海山も良い。
ここでもできればダラダラしようと思ったが、とにかく暑い。水も尽きている。それにコーラが飲みたくなって、ここもさっさと下山してしまうことにする。そう決まれば下りは速い。転がるように下山して30分程度で麓に着いた。登山口には猿の群れがたむろしている。再びウオオオオオ!!と叫び声をあげたら散り散りになった。人間様を舐めるんじゃねえ。
坂戸山の麓のコンビニでコーラを買って一瞬で飲み干す。火照った身体に極上の炭酸が染み渡る。シンスプリントにも染み渡っているかもしれない。なぜなら痛いからである。
時計を見たらまだ16時で、これなら明るいうちに六十里越を越えられそうだ。明日の行く場所など決まっていないが、とりあえず只見には戻りたい。車の窓を開け、湿った夏の夕方に黄昏れながら、魚沼平野をひた走る。
252号線からスラブを観察しながら会津と越後の国境を越え、只見の駅前に出てくると雨が降っていた。只見線の最終列車を見送り、明日は山に行けないな、何をしようか、このまま只見で沈没してしまいたい、などと考えながら、八町温泉へ向かうのであった。
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