南会津 実川矢櫃沢~大丈田代~山犬田代~七兵衛田代~実川支流下降

2024/6/16(日)-17(月)

檜枝岐近辺の地形図を眺めていると、奥鬼怒の裏側から七入へ流れ込む実川の右岸に3つの田代を確認できる。長須ヶ玉山から孫兵衛山の稜線の西側にある3つのその田代は、北から大丈田代、山犬田代、七兵衛田代である。

元々孫兵衛山にはテレマークスキーで訪れようと思っていて、その際のルートに絡めようと考えていたのだが、ちょうどゴックン氏と植物観察系の山行の行先を探していたところ、この田代三兄弟を沢から訪れてみようということになった。南会津ラバーズの端くれとして、南会津近辺の他の湿原と似たような植生であるのかどうかも気になるし、とりあえず行ってみて確かめてみよう。

七入から赤倉沢の出合の辺りまで林道が通っているが、落石と崩落でもはや車では通れない。七入の駐車場に車を置いて、林道脇の植物を観察しながら矢櫃沢の出合まで1時間弱の林道歩きをこなす。入渓地点には橋が架かっている。

準備して矢櫃沢へ入渓する。初夏の青々とした緑の隙間から、優しく木漏れ日が零れる。小滝に手を突っ込むと、自らにかかる冷ややかな水しぶきが気持ちいい。あぁ、愛すべき季節がやってきた。夏の到来だ。

容易に登れる小滝をこなしていくとやがて沢の流れは細くなる。沿道のチシマザサにちょっかいを出しながら大丈田代に出ようとしたが、雲行きが少し怪しい。大丈田代から上は水が確保できるかどうか微妙だったこともあり、手頃な適地を見繕って、「ここをキャンプ地とする」をした。

タープとテントを張り、薪を集めてから空身で大丈田代へ向かう。5分ほど沢を歩き、少しばかりの笹薮を漕ぐと一気に視界が開けた。ついに来た。大丈田代だ。想像よりもそれは「湿原」だった。まるで野球場のような、秩序ある草原に穏やかにワタスゲが揺れている。可愛らしいタテヤマリンドウがあちこちで花を咲かせている。奥の方にはヤマツツジが咲き乱れていて、花を付けてはいないがコバイケイソウも群生している。深い森の中にこんな楽園があるのか。想像以上の景色に心躍った。

また明日も行くのでほどほどに散歩して幕営地へ戻る。一息ついていると大粒の雨が降ってきた。早めに行動を切り上げたのは正解だったようだ。少しばかりの昼寝をして、焚火を起こし、担いできた肉と、山の実りをお腹いっぱいに頬張った。

翌朝、目が覚めると心地よい朝日が差していた。のんびりと朝食をとり、お茶を飲んだりしていたら、出発が9時ごろになってしまった。

大丈田代は午前中のきらびやかな日光に照らされて輝いていた。時間を変えるだけで同じ季節でもこんなに表情が違う。コバイケイソウが花開く時期も素晴らしいことだろう。長須ヶ玉山の優しいピークもこの湿原の重要な味付けになっている。記念撮影をして先に進む。

山犬田代へは大丈田代の西から南東方向に伸びている沢状地形を詰めたのち、ピークを乗越して沢状を下り、山犬田代の北へ伸びている沢状地形を再び登ることにした。

大丈田代からの沢状地形はひたすらチシマザサの藪漕ぎになる。笹の薄いところを繋ぎながら藪を漕いでいくと、やがて藪が薄くなって土が出てきて、ちょっとしたピークに出る。そしてまた再び藪を漕いで沢状地形を下っていくと沢に水が出始める。下っていくと山犬田代方面に向かう苔むした沢が流れ込んでいるので、これを詰めていく。

山犬田代は気まぐれな宇宙人が山の中にレーザーでも撃ったかのようで、山にぽっかりと毛穴が空いたような、とにかく小さくかわいらしい湿原だ。おそらく山犬田代ではなく、「山丈」田代の書き間違いなのだろうが、偶然にも「山犬」などという絶妙にかわいらしい響きが、この湿原の魅力を引き立たせている気がする。植生は大丈田代と変わりなく、タテヤマリンドウとワタスゲがそよ風に揺れている。ザックを下ろそうとした10cm先に鹿の糞の塊が転がっていた。危ない危ない。写真をバシャバシャ撮って、お菓子タイムにする。

山犬田代から七兵衛田代は樹林帯を斜面を登っていく。10分くらい歩くと視界が開け、今回の最終目的地、七兵衛田代に辿り着く。田代に入るとハート型の小さな池塘が歓迎してくれた。草原の先に孫兵衛山の穏やかな姿が見える。タテヤマリンドウのお花畑がいっぱいに広がり、奥の方ではワタスゲがふわふわと緑の上で蛍火のように浮いている。足元に目を凝らせばモウセンゴケとヒメシャクナゲのなんとかわいらしいことか。まるでRPGのゲームクリアような、最終目的地に相応しい楽園だ。

七兵衛田代からは田代の南東から出ている実川の支流を実川本流の方へ下っていった。名前はよく分からないので今度檜枝岐の道の駅の地図で調べよう。実川の源流部は渓相よく、硫黄沢や赤倉沢の記録をちらほら見るが、下降にとったこの沢も明るく気持ちのいい沢だった。途中、大きなカモシカがいきなり目の前に現れたり、ハコネサンショウウオの幼生と戯れたりしながら呑気に下っていく。そういえば檜枝岐村ではサンショウウオが郷土料理で食べられているそうだ。どんな味がするのか、是非気になる。

実川の本流が近くなると大きなゴルジュ状となり下降が難しそうに見えたので、赤倉沢との出合の辺りから右岸側の斜面に上がり尾根状を乗っ越してズリズリ下ると林道に出た。ここからはゴックン氏と山に関する色んな話だったり、アニメを布教したり、ゴックン氏が薮に投げ込んだ石の音を野生動物と誤認してビビり散らかしたりしながら、七入まで長い林道歩きをこなした。檜枝岐の道の駅でインコの「こたろう」と触れ合い、今回の山行で大活躍した「山人の焼肉のタレ」を途中の売店で購入して 、宇都宮へ向かった。

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